駆動系パーツ
田中ミノル式  FF 機械式 LSD 完全解説  「曲げるための LSD 有効活用法」③

2015年01月22日(木)

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今回は、前回の 「イニシャルトルク」 に続き、「カム角」 の解説を
しましょう。

LSD には、ドライバーが、アクセルによって、加速/減速(除く、1way)と
いったアクションを起こしたとき、デフのロックが強くなるように、
カム と呼ばれる ものが、装着されており、その カム の角度のことを
「カム角」と言います。

そして、このカム角 を機構的に説明するのではなく、ドライバー視点にて、
ドライビングに必要な部分だけを 超カンタン に、説明するならば、

LSD の効きが、一番強いポイントを決定するファクター」

となり、下図  B のポジション が、カム角の大小により、変化するのです。

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このように、LSD の効きが、

一番 「弱い」 ポイント を決定するのが、イニシャルトルク で、
一番 「強い」 ポイント を決定するのが、カム角

なのであります。

また、カム角の違いによる LSD の効きをイメージグラフで表現すると、
下記の感じとなります。

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いかがでしょうか?なんとなく、イメージが伝わるでしょうか??

このように カム角 は角度の表記となり、

角度が大きいと、より速く、そしてより強く ロック し、
角度が小さいと、マイルド に ロック する方向となります。

※ 効きの強さとスピードは、LSD の種類、イニシャルトルク、
使用オイルによっても変化します。

また、この カム角 は、加速側、減速側の 2種類が設定されており、
FF の場合、加速側 (アクセルON にて、加速している時) の 方が、
減速側 (アクセルOFF にて、エンジンブレーキが効いている時) より、
LSD の効き (ロック) が強くなる設定となっています。

なお、どの程度のロックを強いと感じるかは、ドライバー、セットアップ、
使用タイヤ、使用ステージによって、大きく異なりますが、
誤解を恐れずに、角度と効きの強さをイメージでお伝えすると・・・・・・・、

加速側
40度未満  →  カム角 小   効き弱め
40~50度  →  カム角 中   効き中間   
50度以上  →  カム角 大   効き強め

減速側
0~5度   →  カム角 小   効き弱め
5~20度   →  カム角 中   効き中間   
20度以上  →  カム角 大   効き強め

といった感じです。

たとえば、 加速側 60度  減速側 0度 であれば、
加速側は、強め 減速側は、弱め のセットアップ。

加速側 45度  減速側 30度 であれば、加速側は、
強めと弱めの中間  減速側は、強め のセットアップとなります。

※ 上記の評価基準は、田中ミノルの個人的見解となります。

そして、LSD は、カム角 の組み合わせから、
以下の3つのジャンルに分類されることもあります。

加速側と、減速側のカム角が同じもの  →  2way
(加速側と、減速側が、同じ強さでロックされるタイプ)
たとえば、加速側 45度  減速側 45度 等。

加速側と、減速側のカム角が違うもの   → 1.5way
(加速側に対し、減速側のロックの方がやさしいタイプ)
たとえば、加速側 50度  減速側 10度 等。

※ 減速側 0度 を除く

加速側(カム角設定あり)、減速側(カム角 0度)のもの   →  1way
(減速側は、カム角にてLSDがロックしないタイプ)
たとえば、加速側 40度  減速側 0度 等。

FF 車両の場合、一般的には、1.5way と、1way が、主流となりますが、
1.5way の中には、減速側のカム角が、1度でも、30度でも、1.5way
表記となりますので、少々混乱しますね・・・・・。

要するに、同じ1.5 way 表記であっても、1way と、
ほとんど変わらないものから、かなり、2way 寄りのものまで、
幅広くありますので、この way 表記ではなく、

たとえば、45-10 とか、60-05 といったように、カム角 で覚えてしまうと、
もっと、その LSD のキャラクターが、明確に理解できるかも知れないですね。

いや~、今回も、マニアックですいません・・・・・・。

前回 & 今回のポイント をまとめますと、

加速時のロックの強さ
 →  イニシャルトルク + 加速側のカム角 で決定

減速時のロックの強さ
 →  イニシャルトルク + 減速側のカム角 で決定

加速も減速もしていないときのロックの強さ
 →  イニシャルトルク で決定

といったことです。

以上のことから、セットアップの方向性としては・・・、
加速も減速もしていないときのロックと、減速時のロックをマイルドにして、
加速時のみロックを強めたいなら、
イニシャルトルク弱め、加速側のカム角(大)、減速側のカム角(小)となり、
加速時も、減速時も、そして、加速も減速もしていないときのロックも
強くしたいなら、イニシャルトルク強め、加速側のカム角(大)、
減速側のカム角(大)となります。

このように、LSD の効きの領域を 「イニシャルトルク」 と、
「カム角」 で設定し、この範囲の中で、アクセル の ON /OFF により、
LSD の効き(ロック率)を変化させる。

そして、このロック率の変化を活用し、コーナリング に アドバンテージ を
発生させること、それが、LSD を使用する メリット となるのです。

以上で、LSD の基本的な機能の解説は、終了となり、
次回からは、いよいよ!!LSD を ドライバーが、どのように活用することで、
速く走ることが出来るのかを ドラテクを交えて解説したいと思います!