サスペンション
TM-SQUARE ダンパーキットの詳細説明②

2010年04月02日(金)

TM-SQUARE のダンパーには、

減衰力の調整がついています。

 

 

フロント部分は、倒立なので、

ダンパーの下側に調整する部分があります。

 

 

 

p11509371

 

 

 

そして、リアは、正立なので、

ダンパーの上部に調整する部分があります。

 

 

p11505351

 

 

減衰力を調整するときは、

一番締め込んだ状態から、

何段階戻したかをデータとして、セッティングに役立てて下さいね。

(反対は、ダメですよ)

 

 

でもって、ひとつの目安として、

 

サーキットでは、1戻し~15戻しの全域を使用しますが、

田中が、基本的に使用しているのは、

 

フロント 5戻し~12戻し

リア   8戻し~15戻し

 

そして、ストリートでも、1戻し~15戻しの全域を使用しますが、

田中が、基本的に使用しているのは、

 

フロント 5戻し~15戻し

リア   5戻し~15戻し

 

レベルです。

 

 

また、TM-SQUAREダンパーキットは、

1way タイプですので、

ダイヤルを回すと、バンプ側/リバンプ側ともに、

減衰力が変化します。

 

(バンプ側/リバンプ側を個別に、

減衰力調整することは、できません)

 

 

 

 

もちろん、フロント/リアともに、

ダストブーツも、付属しています。

 

 

 

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p116001511

 

以上、スゴ~く長くなってしまいましたが、

TM-SQUARE ダンパーキットの説明でした!

サスペンション
ダンパー講座④ HYPERCOの登場と減衰力の関係

2010年03月29日(月)

 

ダンパーに求められる、

「スプリングと分業化するための減衰力」 は、

HYPERCOスプリング の登場で、大きく変化しました。

 

 

 

なぜなら、HYPERCO 登場以前のスプリングは、

縮み始めのレート特性が、規定レートより低いタイプが、主流だったからです。

 

 

 

この、プログレッシブタイプのような特性を持ったスプリングでは、

同レートであっても 0G → 1Gまでのストローク量が、

大きくなってしまいます。

 

 

 

下の図を見てください。

 

 

 

 

wait_2

 

 

 

 

たとえば、スプリングレートの表記が、

10kg/mm の2種類のスプリングがあったとしましょう。

 

 

 

これらのスプリングに、

コーナーウエイトに相当する300kgの荷重をかけると、

① のスプリングは、最初から、10kg/mmのレートを発生していますので、

300kg÷10kg/mm = 30mm のストロークとなります。

 

 

 

 

対して、② のスプリングは、初期のレートが表記より低く、

仮に縮みはじめ50mmまでの平均レートを6kg/mmとすると、

300kg÷6kg/mm = 50mm のストロークとなります。

 

 

 

 

そうです、この状態が、「1G」 と呼ばれる状態です。

 

 

 

そして、② のスプリングも、50mm以上のストロークでは、

表記どおり、10kg/mmのレートになると仮定すると、

「1G」 から、荷重が増える分には、両スプリングとも、

まったく同じ分だけ、荷重変化に対してストロークします。

 

 

 

が、しかし・・・、サスペンションは、縮むだけではありません。

「1G」 を境に、荷重によって、縮んだり、伸びたりします。

 

 

 

そして、縮むことに関しては、①も②も同等の変化となりますが、

伸びる部分では、大きな違いが発生します。

 

 

 

当然、1Gまでのストローク量の多い②は、

荷重が少なくなった状況では、伸び側のストロークが大きくなってしまうのです。

 

 

 

 

 

wait_1

 

 

 

 

 

 

この状況を抑制するため、

ダンパーのリバウンド側の減衰を強くし、

内側のスプリングの、伸び上がりを抑制するという、

ダンパーセットが、以前は主流でした。

 

 

 

しかし、HYPERCOスプリングの登場により、

荷重移動によるスプリングの伸びと縮み量が同じとなることから、

このリバウンド減衰による、制御は不要となりました。

 

 

 

結果、バンプとリバウンドの減衰力は、同じレベルとなり、

「スプリングとダンパーの分業化」 が、可能となったのです。

 

 

 

もちろん、リバウンドの減衰力が、弱くなったことで、

ストリートでの乗り心地も、大きく改善されたのです。

 

 

 

HYPERCO スプリングって、スゴイでしょ?

 

 

 

 

 

サスペンション
ダンパー講座③ 理想的なダンパーって?

2010年03月26日(金)

田中の思う、理想的なダンパーの条件は、2つ。

 

一つ目は、

「スプリングの動きに悪影響を与えないこと」 です。

 

スプリングは、荷重に比例して、

ストローク量(ロール量)を決定します。

 

この動きにダンパーが関与しないと、

荷重の移動量に比例して、クルマが傾いてくれますので、

ドライバーは、荷重の移動量が手に取るように把握できます。

 

要するに、「乗りやすい」 「限界がわかりやすい」 といった

ドライバビリティーの高いクルマになり、

セッティングの方向性も非常にシンプルになります。

 

 

二つ目は、

「ダンパーが動き始めた瞬間から、シッカリと減衰力が立ち上がること」 です。

 

みなさんのイメージでは、ダンパーが動き始めるのは、

ブレーキやコーナリングのアクションを起こした時ですよね。

 

でも、実際は、ずーっと、ダンパーは動いているのです。

 

下のグラフは、岡山国際サーキットの

裏ストレート部分のデータロガーです。

小刻みですが、かなり、動いているのが理解できると思います。

 

 

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ちょっと、見にくいですが、グラフ下の目盛りは、

時間軸となり、一番小さな目盛りが、コンマ1秒となります。

 

グラフから読み取ると、だいたい、1秒間に7~10回、

2mm程度、伸びたり縮んだりを繰り返していますよね?

 

 

ということは、ダンパーピストンも、

2mm程度、上下に動いているんですが、

この時、ピストンのシムの中に、

オイルが通過していないダンパーって、結構多いんです。

 

要するに、ステアリングでいうところの

「遊び」 が発生しているということです。

 

こうなると、動きはじめの最初の2mmは、

減衰が立ち上がらないダンパーとなり、

走行中の微振動で、上下4mmの間は、

減衰力がゼロとなってしまう場合があります。

 

この状態で、ギャップや荷重移動により、

急にダンパーが大きくストロークすると、

最大、動きはじめからの4mmの間、

減衰力がゼロの状態となり、

その後、急激に減衰が立ち上がってしまします。

 

 

また、減衰力がゼロだと、

当然、ダンパーのピストンスピードも上がってしまい、

その後、シムの間にオイルが通過しはじめる瞬間、

大きな減衰が突然発生してしまいます。

 

要するに、突っ張ってしまう、バネ成分の強いダンパーとなるのです。

 

 

反対に、最初の1mmに減衰があれば、

途中で、減衰に大きな変化がありませんので、

スムーズでしなやかな、スプリングと荷重の変化量に

的確に応じる、リニアな足廻りとなります。

 

 

 

これが、田中が求めている、理想的なダンパーの

2つの条件なのです。

サスペンション
ダンパー講座② ダンパーでロール量をセットアップするデメリット

2010年03月25日(木)

以前は、車高調と言うと、

ノーマルに比べ、ストローク量が少なくなることから、

その分、強い減衰が必要と考えられ、

レースの世界でも、10~15年ぐらい前までは、

バンプもリバンプも”ガチガチ”の時代がありました。

 

しかし、減衰力の高いダンパーを装着すると、

どうしてもダンパー自体がバネ成分をもってしまいます。

 

たとえば、スプリングレートは、10 Kgf/mmなのに、

それに、ダンパーの減衰力から発生するレート(バネ成分)、10 Kgf/mmが加わり、

ある部分では、20 Kgf/mmになってしまうこともあるのです。

 

 

では、ダンパーの減衰力調整を利用して、

「ロール量」 を変えると、何がいけないかを説明しましょう。

 

 

もし、スプリングのレートではなく、ダンパーの減衰で、

「ロール量」 を変えてしまうと・・・・・、

 

① ダンパーのストロークするスピードによって、減衰(スプリングレート)が変化する。

② ダンパーオイルの温度により、減衰(スプリングレート)が変化する。

 

といった理由で、不都合が発生します。

 

①の場合、ダンパーは、ストロークするスピードが速いと、

大きな減衰力が発生しますので、

コーナーの種類によってダンパー減衰を加味した

全体のバネレートが変化してしまいます。

 

たとえば、ハイスピードコーナーでは、

20 Kgf/mmのバネレートなのに、

ロースピードコーナーでは、12 Kgf/mmになったり、

コーナーの入口では、20 Kgf/mmのバネレートが、

コーナーの中では、15 Kgf/mm → 12 Kgf/mm と

いったように変化します。

 

 

また、②の場合、

ダンパーは、ダンパーオイルの温度が高くなると、

減衰が弱くなりますので、

同じコーナーの同じ場所でも、

最初のラップでは、20 Kgf/mmだったものの、

連続ラップで、ダンパーオイルの温度が上昇すると、

15 Kgf/mm → 12 Kgf/mm と変化します。

 

 

こうなると、ダンパーのバネ成分を加味した、

全体のスプリングレートが変化することから、

タイヤにかかる荷重の増減も変化し、

結局、ピーキーな特性から、

タイヤのグリップがうまく使えなくなってしまいます。

 

もちろん、その時々で、スプリングレートが変化することから、

ドライバビリティも、著しく低下してしまいます。

 

 

要するに、「ロール量」 が多いならば、

「ロール量」 を決めるスプリングのレートを上げるべきです。

 

 

そうすると、どこのコーナーでも、コーナーのどの部分でも、

荷重にリンクした、「ロール量」 となり、セットアップもシンプルで、

ドライバーも動きを把握しやすくなります。

 

これをダンパーで行うと、あまりにも変化してしまう要素が多すぎて、

セッティングもドライビングも複雑になるだけなのです。

 

ダンパーの減衰で、セットアップするのは、

「ロール量」 ではなく、「ロールスピード」 です。

 

スプリング →  荷重の増減によって、”ロール量”を決定する

ダンパー  →  ロールのスピードを決定する

 

 

といった、完全分業が、一番シンプルで、

ドライバーは荷重移動のインフォメーションが把握しやすく、

タイヤのグリップを最大限に活用できるのです。

サスペンション
ダンパー講座① ダンパーの仕事ってなに?

2010年03月24日(水)

サスペンションの構成部品であるダンパー。

 

TM-SQUARE のダンパーキットも、

発売直前ということで、ちょっと、ウンチクを

何回かに分けて、書きたいと思います。

 

 

 

 

ダンパーを装着する、最大の目的は、

タイヤのグリップを最大限に発揮させることと、

ドライバビリティー(走りやすさ)を向上させることです。

 

では、そのために、ダンパーは、

いったいどんな仕事をしているか、説明しましょう。

 

ダンパーの仕事は大きく分けて2つあります。

 

① スプリングの伸び縮みするスピードを制御する。

② 走行中のピッチングを抑制する。

 

「スプリングの伸び縮みするスピードを制御する」 とは、

コーナーでハンドルを切り込む手前から

コーナーの中で、最大ロールするまで、

スプリングをどんなスピードで縮ませるかを決定することです。

 

コーナーの入口近辺で、最大ロールにして、

クルマの傾きを止めた状態で、クリップまで行くのか、

それとも、クリップまで、徐々にロールを増やしながら、

コーナーに進入するのかを決定します。

 

もちろん、加速や減速でのクルマの傾くスピードも

ダンパーの減衰力が決定しています。

 

 

 

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また、ここでよく勘違いされるのは、

ダンパーの減衰力でロール量を変化させようという考えです。

 

これは、間違った考えで、

 

あくまでも、

スプリングレート →  ロール量を決定させる

ダンパーの減衰 →  ロールスピードを決定させる

 

であるということを、よ~く覚えておいて下さいね。

 

 

そしてもうひとつの仕事、

「走行中のピッチングを抑制する」 とは、

カンタンに言うと、ギャップに乗り上げた後、

いつまでも、”フワフワ”とクルマの揺れが止まらない状態を、

ダンパーの減衰力で安定させることです。

 

でもね、この部分は、ノーマルカーとチューニングカーで、

必要性が違ってきます。

 

 

ノーマルカーでは、使用するスプリングが、

大径で、レートが低く、ストロークも大きいことから、

ギャップに乗り上げると、ピッチングは発生してしまいます。

だから、ダンパーの減衰によって、それを止めなければなりません。

 

しかし、チューニングカーやレーシングカーでは、

直巻きスプリングに代表されるように、

小径で、レートが高く、ストロークが短いため、

ギャップに乗り上げた後、いつまでもクルマの揺れが

止まらないようなことにはなりません。

「ホントに~?」 と思われるかもしれませんが、

スプリングレートが高い、直巻きタイプでは、

“フワフワ”する原因である、「固有バネ振動数」 が、

通常使用域にリンクしないため、この症状は、発生しなくなるのです。

 

 

だから、スポーツ走行を目的に、装着された

直巻きタイプでは、

② 走行中のピッチングを抑制する。  ということは、

ダンパーの仕事として、受け持つ必要がないのです。

 

 

このように、ノーマルカーとチューニングカーでは、

ダンパー減衰の必要性が、一部違うんですね~。