田中ミノル式  FF 機械式 LSD 完全解説  「曲げるための LSD 有効活用法」②

Content1でお伝えしましたように、オープンデフは、
大きな荷重移動により、内輪のタイヤが浮き上がったり、グリップが弱くなると、
しっかりグリップしている外輪にも、トラクションが伝わらなくなってしまいます。


そこで! スポーツドライビングでは、グリップに左右差がある状況でも、
ドライバーの指示に対して、的確にトラクションを発生させることができる、
LSD と呼ばれるパーツを使用するのであります。



では、その LSD のことを詳しく説明する前に、
まずは、デフの 「ロック率」 に関することを解説します。



デフの 「ロック率」 とは、
どれぐらいの強さまで、左右のタイヤが、連結された状態をキープできるか
を数値化したもので、



ロック率が一番低いのが、「オープンデフ 状態」
ロック率が一番高いのが、「デフ ロック 状態」となります。


まず、オープンデフ 状態とは、左右のタイヤがまったく連結されておらす、
自由に個々の回転数で走行することができます (よって、左右の回転差を吸収できる)。


反対に、デフロック状態 (ロック率100%) とは、レーシング カート のように、
「駆動輪が、完全に連結 (左右のドライブシャフトが1本化) された状態」となり、
左右のタイヤは、ストレートでもコーナーでも、いつでも同じ回転数となる状況です。
スプールデフ、ロックデフ、溶接デフとも呼ばれています。



そして、もちろん、ロック率が高くなるほど、トラクションは、強くなります。





それでは、LSD の解説をはじめましょう!

LSD とは、 「リミテッド・スリップ・デフ」 の頭文字となり、

田中ミノル式 に翻訳するなら、
「設定されたトルク以上の力がかかると、滑りはじめるデフ」となります。

※ 滑る = 左右の回転差を発生させる という意味合いです。
※ もちろん、滑りはじめる前は、ロック (左右のタイヤが連結) しています。


要するに、すぐに滑ってしまう、「オープンデフ」 よりロック率が高く、
絶対に滑らない 「デフ ロック」 よりロック率が低い という
中間的なポジションが、LSD なのであります。



そして! LSD には、
走行中のアクセル開度により ロック率を変化させられる機能があります。


アクセルON (加速中)、
または、アクセルOFF (エンジンブレーキが効いている状況) では、ロック率は高くなり、
アクセルを少しだけ踏んで、加速も減速もしていない状況では、ロック率は低くなります。


※ 1Wayタイプ のLSD では、アクセルOFF にて、ロック率が高くなりません。



このように、LSD は、ロック率が固定されておらず、
アクセル開度によって、下図 A-B の範囲にて変化するのが特徴です。





また、LSD のセットアップを変更すると、
上図ロック率の領域 (青の領域) 自体を変化させることが可能となります。

この時、「どの状況で、LSD をどれぐらい効かせるか」 を決定している要素が、
セットアップの決め手となる 「イニシャルトルク」「カム角」 と呼ばれる 
2つのファクターとなります。


では、まずは、「イニシャルトルク」 から、解説しましょう。


イニシャルトルク を 田中ミノル式 に翻訳するなら、
「はじめから設定されている デフのロック率」となり、


そして、イニシャルトルク を機構的に説明するのではなく、
ドライバー視点にて、ドライビングに必要な部分だけを 超カンタン に、説明するならば、


「LSD の効きが、一番弱いポイントを決定するファクター」

となります (上図 A のポジション)。



LSD の効き (ロック率) が一番弱い状況とは、
アクセルにより、加速も減速も させていない状態となりますので、
このポイントにて、どの程度の強さで左右のタイヤがロックされるかを
決めているのが、イニシャルトルク となります。



具体的には、タイトコーナーのクリッピングポイント近辺、
コーナー出口に向かって、加速する直前の状況や、
(ほとんど、エンジンブレーキが効いていない状態)

高速コーナーで、加速も減速もしないぐらい 少しだけアクセル を踏んでいる状況にて、
LSD がどれぐらいロックしているかを決めるのが、イニシャルトルク です。



そして、イニシャルトルクが低い場合 (一般的に、FF車両の場合 3~5k レベル) では、
LSD の一番効かないポイント は、オープンデフに近いポジジョンとなり、


反対に、イニシャルトルクが高い場合 (一般的に、FF車両の場合 8~10k 以上のレベル)では、
少し、デフロックよりのポジジョンとなります。




また、イニシャルトルク が、あまりにも高い場合は、
Bの位置が変化する可能性もありますが、基本的にイニシャルトルクは、
LSD の効きが、一番弱いポイントを決定するファクターとなります。



Content3では、
もうひとつ ファクターである 「カム角」 のお話をしたいと思います。




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  • ※本編は、田中ミノルが今まで経験したことを元に、私的な見解にて、解説を行っておりますので、物理的な裏付けはありません。また、実際に、本ドラテクを活用されたことにより発生したトラブル等に関しては、田中ミノル および ㈱ミノルインターナショナルは、一切責任を負いませんので、すべて自己判断にてご活用下さい。
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