FF車輌にマッチングするLSDのポイントは3つ

① 加速側のカム角

まず加速側では、大きなカム角で、ガツンと急激に効いてしまうと、トルクステアが発生し、
ピーキーなドライビングを強いられてしまいます。

※トルクステアとは、アクセルのON/OFFによって、ステアリングが左右に取られる状態です。

しかし、効きがマイルド過ぎると、安定したトラクションが伝わらないことから、タイトコーナーの
出口で、フワフワとした、アンダーステアが発生します。

そこで、ちょうどこの中間の効き(カム角)にセットする必要があります。
イメージで言うと、コーナーの出口、アクセルを踏みはじめた瞬間は、少しロック率が足りないような
感じがしますが、踏み込むにつれて、しっかりトラクションが確保され、アンダーステアが抑制される
レベルがBESTです。


② 減速側のカム角

減速側でLSDがロックするメリットは、ブレーキングが安定することです。
反対にデメリットは、減速中にクルマが安定し過ぎることから、進入時にアンダーステアになることです。

適度のロック率では、ブレーキングが安定するにもかかわらず、進入時のアンダーステアは発生しません。
要するに、このちょうど良いロック率を発生する減速側のカム角をチョイスすることが重要なのです。


③ イニシャルトルク

最適なイニシャルトルクは、単体の強さで考えるのではなく、加速側のカム角、減速側のカム角と、
一緒に考えなければなりません。なぜなら、ロック率や、ロックするタイミングは、カム角+イニシャルトルク
のトータルで、設定されるからです。

また、イニシャルトルクが強過ぎると、ストリートでの振動や、チャタリング音、そして、トルクステアの
原因にもなります。もちろん、エンジンパワーの駆動損失も大きくなります。

よって、FF車輌にマッチングするLSDのイニシャルトルクは、必要最低限とし、それをカム角で補う
セットアップがBESTなのです。

1wayタイプの減速側のロック率

FFには、減速側ではカムによるLSD効果のない、1wayタイプLSDが主流ですが、それでも
イニシャルトルク分は、減速側でもロックが発生します。
「1wayタイプ = 減速側で、いっさいロックしない」では、ないのです。

よって、イニシャルトルクとカム角の組み合わせによっては、1.5wayよりも、減速側のロック率が
高い、1wayも存在する状況もあるのです。
(イニシャルトルクは、加速側も減速側も同じ数値となります)

このことから、たとえ1wayでも、減速側のロック率が高過ぎて、アンダーステアが発生するという
状況もあるのです。

LSDは、1way、1.5way、2wayというタイプより、カム角とイニシャルトルクの組み合わせで発生する、
このロック率をトータルで考え、セットアップしていくことが、何よりも重要なのです。

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