駆動系パーツ
田中ミノル式  FF 機械式 LSD 完全解説  「曲げるための LSD 有効活用法」②

2015年01月21日(水)

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前回、お伝えしましたように、オープンデフは、大きな荷重移動により、
内輪のタイヤが浮き上がったり、グリップが弱くなると、しっかりグリップ
している外輪にも、トラクションが伝わらなくなってしまいます。

そこで! スポーツドライビングでは、グリップに左右差がある状況でも、
ドライバーの指示に対して、的確にトラクションを発生させることができる、
LSD と呼ばれるパーツを使用するのであります。

では、その LSD のことを詳しく説明する前に、
まずは、デフの 「ロック率」 に関することを解説します。

デフの 「ロック率」 とは、
どれぐらいの強さまで、左右のタイヤが、連結された状態をキープできるか
 を数値化したもので、

ロック率が一番低いのが、「オープンデフ 状態」
ロック率が一番高いのが、「デフ ロック 状態」

となります。

まず、オープンデフ 状態とは、左右のタイヤがまったく連結されておらず、
自由に個々の回転数で走行することができます。
(よって、左右の回転差を吸収できる)

反対に、デフロック状態 (ロック率100%) とは、
レーシング カート のように、

「駆動輪が、完全に連結 (左右のドライブシャフトが1本化) された状態」

となり、左右のタイヤは、ストレートでもコーナーでも、
いつでも同じ回転数となる状況です。
スプールデフ、ロックデフ、溶接デフとも呼ばれています。
そして、もちろん、ロック率が高くなるほど、トラクションは、強くなります。

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それでは、LSD の解説をはじめましょう!

LSD とは、 「リミテッド・スリップ・デフ」 の頭文字となり、
田中ミノル式 に翻訳するなら、

「設定されたトルク以上の力がかかると、滑りはじめるデフ」 となります。

※ 滑る = 左右の回転差を発生させる という意味合いです。
※ もちろん、滑りはじめる前は、ロック (左右のタイヤが連結) しています。

要するに、すぐに滑ってしまう、「オープンデフ」 よりロック率が高く、
絶対に滑らない 「デフ ロック」 よりロック率が低い という
中間的なポジションが、LSD なのであります。

そして! LSD には、走行中のアクセル開度によりロック率を
変化させられる機能があります。

アクセルON (加速中)、または、アクセルOFF
(エンジンブレーキが効いている状況) では、ロック率は高くなり、
アクセルを少しだけ踏んで、加速も減速もしていない状況では、
ロック率は低くなります。

※ 1Wayタイプ のLSD では、アクセルOFF にて、
ロック率が高くなりません。このように、LSD は、ロック率が固定されて
おらず、アクセル開度によって、下図 A-Bの範囲にて変化するのが特徴です。

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また、LSD のセットアップを変更すると、上図ロック率の領域 (青の領域)
自体を変化させることが可能となります。

この時、「どの状況で、LSD をどれぐらい効かせるか」 を決定している
要素が、セットアップの決め手となる 「イニシャルトルク」 
「カム角」 
と呼ばれる2つのファクターとなります。

では、まずは、「イニシャルトルク」 から、解説しましょう。
イニシャルトルク を 田中ミノル式 に翻訳するなら、

「はじめから設定されている デフのロック率」 となり、
そして、イニシャルトルク を機構的に説明するのではなく、
ドライバー視点にて、ドライビングに必要な部分だけを
超カンタン に、説明するならば、

LSD の効きが、一番弱いポイントを決定するファクター」となります
(上図 A のポジション)。LSD の効き (ロック率) が一番弱い状況とは、
アクセルにより、加速も減速も させていない状態となりますので、
このポイントにて、どの程度の強さで左右のタイヤがロックされるかを
決めているのが、イニシャルトルク となります。

具体的には、タイトコーナーのクリッピングポイント近辺、
コーナー出口に向かって、加速する直前の状況や、
(ほとんど、エンジンブレーキが効いていない状態)高速コーナーで、
加速も減速もしないぐらい 少しだけアクセル を踏んでいる状況にて、
LSD がどれぐらいロックしているかを決めるのが、イニシャルトルク です。

そして、イニシャルトルクが低い場合
(一般的に、FF車両の場合 3~5k レベル) では、
LSD の一番効かないポイント は、オープンデフに近いポジジョンとなり、

反対に、イニシャルトルクが高い場合
(一般的に、FF車両の場合 8~10k 以上のレベル) では、
少し、デフロックよりのポジジョンとなります。2つ896bd2be9e9

また、イニシャルトルク が、あまりにも高い場合は、B の位置が
変化する可能性もありますが、基本的にイニシャルトルクは、
LSD の効きが、一番弱いポイントを決定するファクターとなります。

では、次回は、もうひとつ ファクターである 「カム角」 の
お話をしたいと思います。
みなさん!これぐらいなら、まだ大丈夫でしょうか??