駆動系パーツ
田中ミノル式  FF 機械式 LSD 完全解説  「曲げるための LSD 有効活用法」①

2015年01月20日(火)

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「なぜ、機械式 LSD を装着するのか?」 という問いに、
(そうです! いよいよ、スタートしました!!)

大多数の方が、
「それは・・・、イン側の空転を抑制して、強力なトラクションを得るため」
と答える 機械式 LSDと呼ばれるパーツ(今後、LSD と表記します)。

もちろん、LSD を装着すると、「強力なトラクション」
というメリットは発生します。でも・・・、LSD のメリットは、
トラクションが強いことだけじゃ~、ありません。
(じつは、この何倍ものメリットが、LSD には、あるんです!!)

田中ミノル式 ドラテク において、LSD は、
「トラクションパーツ」 ではなく、「コーナリングパーツ」 であり、
クルマのキャラクターを大きく左右する、とても重要な存在です。

もちろん、「コーナリングパーツ」 ですから、

ハイスピードでコーナーに進入できたり、
コーナーの旋回スピードを上げたり、
立ち上がりのアクセル
ON のタイミングを早めたり、
アンダーステアを大きく抑制したりと、

コーナーを速く走るために活用できるパーツ
それが、LSD だと思っています。

そして、「コーナリングパーツ」 として、LSD を活用するためには、
ドライバー自身が、LSDの使い方を正しく理解していることが、
とても重要なポイントとなるのです。
(LSD を装着したのに、ラップタイムが上がらない・・・、
なんてよく聞く話ですからね~)

しかし・・・、雑誌のLSD特集や、LSDに関する各種WEB サイトでは、
非常に詳しく構成部品が図解され、各部の動きを中心に
LSDの機構に関しては、バッチリ解説してありますが、
それを 「ドライバーがどのように活用したら、大きなメリットになるのか」
といった部分については、何も書いていません。

要するに、「LSD が どのような機構なのか?」 といった解説はありますが、
LSD どのように活用すれば、速く走れるのか?」 といった解説は、
見かけないのです。(もちろん、LSD を購入したときの取扱説明書にも、
書いてないですよね・・・)

なぜなら、LSDを 「コーナリングパーツ」 として使用するには、
LSDの効果・効能と、ドラテクをリンクさせながら考える必要が
あるからです。

そうなんです!LSDというハードと、ドラテクというソフトが融合しないと、
LSDは、コーナリングパーツにはならず、トラクションパーツとしての
役割だけで、終わってしまうのです。

そこで、田中ミノル式 LSD 完全解説では、メカニズムの図解や、
複雑な計算式を使用するのではなく、ドライバー目線
(ドライバーが感じ取るフィーリング) のみで、LSDの効果を説明。

そして、LSD を 「どのように活用すれば、より速く走れるのか」
といった部分にスポットを当て、LSD の解説を行いたいと思います。

題して、
田中ミノル式  FF 機械式 LSD 完全解説 「曲げるための LSD 有効活用法」

必要とされているかどうかは、まったくわかりませんが(笑)、
ここ2ヶ月以上、頭の中がLSD だらけだった、田中ミノル が、お届けする
FF 機械式 LSD 徹底解説企画なのであります。ハイ。

これを読んだら、今まで、「???」 だった、LSD のこと、
そして、LSD の使い方が、バッチリ理解できると思いますよ~。
ということで、いよいよ、スタートなのであります!

ご注意
本編は、田中ミノルが今まで経験したことを元に、私的な見解
(思い込みです・・・) にて、解説を行っておりますので、
物理的な裏付けはありません。また、実際に、本ドラテクを
活用されたことにより発生したトラブル等に関しては、
田中ミノル および ㈱ミノルインターナショナルは、
一切責任を負いませんので、すべて自己判断にてお願いいたします。

オープンデフを知る 

LSD の効果を正しく理解するために、まずは、基本となるデフ
(オープンデフ) の解説からスタートしたいと思います。

では、FF 車両の駆動輪を想像してみてください。
いまさら説明するまでもないと思いますが、クルマが左右に曲がるとき、
クルマの内輪と外輪では、走行距離が違うことから、
タイヤの回転差が発生しますよね?

(たとえば、内輪が3回転する間に、外輪は4回転する といったように、
内輪より外輪の方が、たくさん回転します)。

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このように、コーナーで、どうしても発生してしまう左右の回転差を
「トラクションをかけながらも、うまく吸収してくれるもの」
それが、オープンデフと呼ばれる機構です。

ですから、仮に、内輪が3回転する間に、外輪は4回転する といった状況でも、
左右のタイヤに 均等にトラクション がかかり、
この回転差をオープンデフが吸収してくれることから、
「クルマは、スムーズに曲がることができる」のです。

しかし、このオープンデフは、スポーツ走行における大きな荷重移動により、
内輪の荷重が抜けた状況で、ドライバーがアクセルを開けると、
シッカリと路面を蹴るだけのグリップがないことから、
内輪の空転がはじまってしまいます。

すると・・・・・、ガッツリ と グリップ している外輪にも、
エンジンパワーが路面に伝わらなくなる というデメリットも
持ち合わせています。

要するに、内輪がシッカリ接地していない状況では、
ドライバーが、いくらアクセルを踏んでも、エンジン回転だけが上がり、
クルマは加速しない状況となってしまうのです。
(デフが滑る・・・とか、デフが空転する・・・と言われる状況です)

これは、左右のタイヤへ、いつでも、
「均等にトラクションを伝える」 というオープンデフの特性が、
マイナス方向に働き、

内輪のトラクション ダウン    外輪のトラクション ダウン
  (グリップ不足)       (オープンデフの特性) 

といった症状となることが原因です。
この状況では、いくらアクセルを踏み込んでも、
クルマは反応してくれません・・・。

結果、ドライバーからの指示は、クルマに伝わらないことから、
スポーツドライビングにおいて、大きなデメリットとなってしまうのです。

オープンデフ のメリット
コーナーにて発生する左右の回転差を吸収することで、スムーズに曲がれる

オープンデフ のデメリット
大きな荷重移動により、内輪のグリップが弱くなると、
外輪にもトラクションが伝わらない

オープンデフ の特性
いつでも、左右のタイヤへ、均等にトラクションを伝える

みなさん、いかがでしたでしょうか?
わかっているようで、少々、複雑なデフ (オープンデフ) の働き、
ご理解いただけたでしょうか?
では、次回は、デフの 「ロック率」 に関することを解説したいと思います。